挨拶
小西 哲之 ユニット長 H20-H22
京都大学に新しいタイプの研究組織「生存基盤科学研究ユニット」ができてから2年が経ちました。人類の生存のための科学として、組織の枠にも学問の分野にもとらわれず、自由な発想で学際的に総合的な研究を進める、という斬新な発想のもとに結成された組織は、独創的で先見的な概念に基づいています。しかし具体的な組織運営、研究者の活動としては、模索の段階から始まらざるを得なかったのも事実です。対象とする問題は複雑に絡み合う地球環境やエネルギー、人類の生存の問題であり、研究対象として具体的に定義し、分析方法を検討する段階を経て、この意欲的なプログラムは漸く最初の収穫が始まる時期に入ってまいりました。研究組織を構成する中核となる化学研究所、エネルギー理工学研究所、生存圏研究所、防災研究所、東南アジア研究所の間の共同研究や、学内外や外国との協力、文系の研究者との交流を通じて、学際研究としての新しい研究拠点としての方法論は、「サステイナビリティ」の名称とともに徐々に定着してきたようです。
学際的な研究は、異なる分野の研究者をただ寄せ集めた組織や相互に関連のない論文を束ねた報告書では生み出すことはできず、学問分野の壁を越える必要があります。我々生存基盤科学研究ユニットは研究者同士が議論を深め、あるいは研究者自身が複数分野を学ぶことで、組織としても個人としても、この学際研究の困難を克服してきました。その結果、ユニットを構成する研究所間の交流や相互理解はいくつかの問題を経験しながら進んできました。ユニットの若い研究者も、これまでにないタイプの科学として着実に成果をあげつつあります。これからも、生存基盤科学の拠点として人類の持続的な発展を脅かす複雑な問題に貢献する答えを示せるよう、挑戦を続けていきたいと思います。
パンフレット「生存基盤科学研究ユニット」より